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バリアフリーへの旅 文・masa
セレモニーの開始、遅れる

しばらくして、ロシア代表騒ぎも収まると、横断歩道を渡り、本来の取材現場である馬車道ゲートへ。時計を見ると、セレモニー開始までもう30分を切っている。こちらの方では、ロシア代表の到着を横目に、せわしなく準備を進めている。会場には、セレモニーを見に来た様子の車椅子の人たちの姿も見える。また、会場前の歩道には、タロさんのバイク仲間が来ているのか、それとも買い物客のものなのか、数台のバイクが停められている。

しかし、思ったよりも人は集まっていない。とてもいい天気だが、風が強く、張られた横断幕が揺れる。

12時50分。セレモニー開始10分前。遠くから太鼓(?)の音が聞こえてくる。

インターナショナルゲートの方を見ると、プンムルの踊りが近づいてくる。ついにタロさんが来たのか?と思ったら、練習であった。しかし、その後、開始5分前となっても、タロさんの現われる様子はなく、スタッフにもちょっと焦りの色が見えるような気がした。自分自身、どこで待機していようかと考えてしまう。

13時00分。予定開始時刻。司会の恩田裕之(オンダヤスユキ)さんがマイクで話し始め、その声が周辺に響き渡る。とても良く通る、聞きやすい声だ。レポーターのような方と、現場の状況を伝えてもらうやり取りをしているが、どうやらマイクのテストのようだ。しかし、ロシア代表の選手が到着したこともあり、周りには、これから何が始まるのだろうかという雰囲気が生まれる。車で通り過ぎる人たちも、こちらの様子をうかがっている。

プンムルの踊りの人たちが、また練習をしながら、タロさんが到着する予定のインターナショナルゲートの方へと戻っていく。軽快な足どりで、とても楽しそうな雰囲気が伝わってくる。いよいよ本番かと思ったところで、予想以上に風が強いために、映像を映すためのスクリーンが激しく暴れ、スタッフがそれを制止するかのように片付け始めた。その強い風のせいもあり、スタッフの間に、少し疲れたような雰囲気が漂っているような気がした。しかし、そんな中でも、車椅子の人たちは、タロさんの到着への期待に満ちあふれたような、明るい表情を見せており、こちらも少し元気づけられる。

それにしても、自分が取材記者としてこの場所にいるせいか、普段は意識してしまうはずの車椅子の人たちがそこにいることが、とても自然で、当たり前のように思えてくるから不思議だ。

しばらくして、再び、司会の恩田さんが話し始め、今日の完走セレモニーの流れについて説明をする。どうやらセレモニーの開始は30分遅れているようだ。アナウンスの後、韓国のポップスらしい音楽が流れ始める。ナビオス横浜の方は、先程ロシア代表が到着したこともあり、入口のあたりに警備の人たちがたくさんおり、警戒している様子があるが、もう人ごみは無く、閑散とした様子だ。赤レンガ倉庫の方へ向かうと思われる人たちが、会場の前をたくさん通り過ぎる。赤レンガ倉庫前では、このワールドカップ期間中に、さまざまなサッカーイベントが行われているせいか、日本代表のユニフォームのレプリカを着た子供たちもいる。車椅子の人にも背中にKAZUの名前の入ったユニフォームを着ている人がいる。

横断幕を見て通り過ぎる人たちもいるようだが、バリアフリーという言葉が、人々にどんな印象を与えるのか、あまり印象に残らないのか、どうなのだろうか?通り過ぎていく人たちに、いつもの自分を重ねる。気になりながらも、遊びに来たという本来の目的からそれて、それを立ち止まって観て行くほどの心の余裕がないのだ。

寝ていないせいか、取材記者にも関わらず、あくびがたくさん出て困る。周りの視線が少し気になる。
江尻真樹(えじりまさき)
横浜市金沢区在住。
シンプル、純粋、透明をキーワードに、
「人がくつろぐ空間」を考える。
海と猫と、小田和正を愛する27歳。
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