ブックスオオワダ社長 52才
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「作られる部数に対して本屋の軒数が多すぎるってことでしょうね。パイは決まってるのに軒数が多いですから、下の店は入りが少ないんです。」
Q:どんな仕事ですか?
簡単に言えば、本屋ですから、本を売る仕事ですけど、それについての手続きいろいろですね。本屋っていうのは、あの、本が入ってくるについてふたとおりあるんです。ひとつは、委託っていって、出版社のほうがお宅の棚を貸してくださいっていうことで勝手に送ってくるもの。と、もうひとつは本屋のほうが自主的に注文してこれを入れたいという2種類があるんですね。で、委託は返品できるものなんです。それは今現在だと、出版社が発行部数しぼってますんで、入ってこないんです。どんどん減っているんですね。

ということでいっちゃえば、作られる部数に対して本屋の軒数が多すぎるってことでしょうね。パイは決まってるのに軒数が多いですから、下の店は入りが少ないんです。返品できるということはいいことのように思いますけど、逆に出版社から見ると、せっかく作っても帰って来たらそれは寝ちゃうわけですから、半分も返って来たらね、最初から半分に作っとけばよかったっていいうことですから。

そういった感じで、(本は)いま売れてませんから、部数をどんどんしぼっちゃってるわけですよね。で、足りないから注文を出すわけですね。それが最初の質問(オオワダさんの仕事とは?)ですけど、こういうの入って来てないから注文を出そう、と。それからもちろんお客さんから注文受けて、じゃあ、出版社にこういうの一冊送ってくださいっていうのもあります。あと、配達ですね。美容院とか喫茶店とか、定期的に頼まれたものを配達するとか、そういうのがおもな仕事ですね。
「昔だったらね、そんな軒数ないですから、まあ、できた仕事もなかなか成り立ちにくくなってしまったという。だから私の時代が、最後の個人でこうやって小さくやってる本屋ですね。」
Q:この仕事についたのはなぜですか?
うーんと、実家が商売やってまして、畑違いの。本屋ではないんですが、ぜんぜん畑違いの商売をやっていまして、まあ、ゆくゆくは自分も独立して商売をやりたいな、というふうな希望は持っていたんです。それで今から十五年前、もうちょい前ですか。何しようかというふうに考えていたんですけど、実は姉の旦那というのが本屋だったんです。で、そこで相談して、「本屋っていうのはどうだろう?」と言ったら、いいんじゃないかと。で、今度いろいろ相談していくうちに、本決まりになって、本屋になりました。

開いた時はもうほとんどしろうとにすぎないような状況で、ま、いちおう義兄は本屋ですからいろいろ基礎は教わったんですけど、期間が短かったもんで、ほとんどここで経験しながらおぼえてったような状況です。もう十五年ですからある程度のことはわかってますね。本屋になろうと思って始めた本屋としては、私が最後のそういう状況で始めた本屋ですね。私のあとだともう本屋って開けなくなっちゃったんじゃないですかね。チャンスというより、結局店1件開くについてはすごく金がかかるわけです。そのわりに本屋というのは利幅がそんなないですから。

で、私らが開いた後ぐらいから、どんどん郊外店とか開いてきたんですよね。都心でも下手すると千坪くらいの店が出ましたよね。そうすると、もう、小さい店っていうのが、なかなか開店するってことが、投下資本に対して、むずかしい。昔だったらね、そんな軒数ないですから、まあ、できた仕事もなかなか成り立ちにくくなってしまったという。だから私の時代が、最後の個人でこうやって小さくやってる本屋ですね。

Q:どうやればこの仕事につけますか?
これは誰でもつけます。しろうとがやり始めたくらいですから、誰でもできます。ちょっと勉強して。ただ、これからは、まず百パーセントといっていいくらい、こういう小さな規模では無理でしょうね。やってやれないことはないですけど、まあ現実無理でしょう。投下資本に対して、はじめも言いましたけど品物が入って来ませんから、せいぜい雑誌・コミックを売ってるくらいで、なかなかおもしろい仕事じゃなくなっちゃうんじゃないかなと、思いますけど。これからは厳しいですね、はい。
「それはやっぱりお客さんに喜んでいただいた時が一番ですね。一冊でも、早く入ったねとか、こんな早くやってもらってとか、1冊ばかしでとか言われて、それを喜んでもらうとうれしいですね。」
Q:仕事でうれしいことと、つらいことは?
うれしいことですか?それはやっぱりお客さんに喜んでいただいた時が一番ですね。やっぱりあの、一冊でも「早く入ったね」とか言われて、ね、「こんな早くやってもらって」とか「1冊ばかしで」とか言われて、それを喜んでもらうとうれしいですね。つらいって思ったことはないんですけどね。つらいってことはないですね。
「どうやったら儲かるかなって考えたことは、あんまりないんですね。それよりもどうやったらお客さんに嫌われないかなってことを考えてやってきたつもりなんですよ。」
Q:あなたの生き方は?
生き方って言われちゃうとむずかしいですね。仕事の心がけということであれば、私の個人的な考えですけど、仕事をやってて儲けようって考えたことは、どうやったら儲かるかなって考えたことは、あんまりないんですね。それよりもどうやったらお客さんに嫌われないかなってことを考えてやってきたつもりなんですよ。それをお客さんの反応とか見ながら、細かいこと言えば右のものを左に動かしたほうがいいんじゃないかとか、そういった感じで毎日工夫して、改善しているつもりでやってます。
「定価で売れない、つまり価格競争がはじまってしまうわけでして、そうすると当然ながら小さい書店というのはたぶん立ち居かなくなるだろうと。それが将来的に不安ではありますね。」
Q:未来の予想は?
うーん、まあ、ほんとに1年先もわからないくらいですからね。ただ、本屋の場合、再販ていうのがありまして、定価で売れるという決めごとがあるわけですね。それが、あの、公正取引委員会のほうでそれをはずそうかという動きが出て来てるわけです。それが決まってしまいますと、定価で売れない、つまり価格競争がはじまってしまうわけでして、そうすると当然ながら小さい書店というのはたぶん立ち居かなくなるだろうと。それが将来的に不安ではありますね。

あとは、本屋に限らず、インターネットなりで扱う量っていうのでしょうかね、それが本屋に関しても増えてくるんじゃないかと。ただ、そうですね、ほかと違うのは本屋の単価が低いことがあるんです。たとえばマンガ1冊400円や、雑誌1冊500円くらいをいくらインターネットだからといって、それを配送してもらうのかなっていうのはありますね。まあ、未来の予想は、(インターネットが主流に)なるだろうとは思いますけど、どうなるっていうのは、まだ具体的には見えてこないです。

それと、競合する職種っていうのが増えちゃったていうのもありますし、本屋の業種というのが、発行部数自体もさっきいったように減ってますから、日本中(の書店)でいま本が減っていますね。本読まなくなったっていうのは確かにありますから、大学生さんが読んでいないというもありますのでね。そういう時代ですし、雑誌とかコミックスしか売れないようにだんだんなってきてますから。まして堅い本は実際作っても売れないっていうのはありますね。その中でコンビニやインターネットが出てくれば、書店、小さな書店になればなるほど減ってくばかりじゃないかなという不安はありますね。

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